遺言書作成の正しい方法|失敗しないための基本と実践ポイント
人生の終盤に備えて「遺言書を作ろう」と考える方が増えています。特に相続トラブルを防ぎたい方にとって、遺言書はとても有効な手段です。しかし、せっかく作成しても法的に無効になってしまうケースも多く、注意が必要です。
本記事では、相続に関する実務経験が豊富な弁護士の立場から、遺言書作成の正しい方法について解説します。
なぜ遺言書が必要なのか?
遺言書がない場合、相続は「法定相続」によって行われます。つまり、法律で定められた割合に従って財産が分配されます。しかし、法定相続では次のような問題が起こりやすくなります。
- 仲の良くない相続人同士で財産を分け合うことになる
- 事業や不動産など、分けにくい財産があると争いになる
- 特定の人に財産を残したいという希望が反映されない
遺言書があれば、相続人に対して自分の意志を明確に示すことができ、不要なトラブルを防げます。
遺言書の種類と特徴
日本で有効な遺言書には主に以下の3種類があります。
1. 自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
- 自分で全文・日付・署名を書く遺言書
- 2020年から法務局での保管制度あり(希望者のみ)
- 一番手軽に作成できるが、形式不備で無効になることも多い
- 向いている人:費用をかけず、自分で管理したい人
2. 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
- 公証役場で、公証人の面前で作成する遺言書
- 原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配がない
- 証人が2名必要(親族や相続人は原則不可)
- 向いている人:確実に法的に有効な遺言を残したい人、高齢や体調不良の方
3. 秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)
- 内容を秘密にしたまま、公証人に存在だけ証明してもらう方式
- あまり利用されていない(デメリットが多いため)
正しい遺言書作成のポイント
遺言書は内容だけでなく「形式」も非常に重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
1. 誰に何を遺すかを明確に書く
「長男に不動産を相続させる」など、対象の財産と受け取る人を特定できるように記載しましょう。
2. 日付と署名を忘れずに
特に自筆証書遺言では、日付・氏名・押印が必須です。「令和〇年〇月〇日」のように、特定できる形式で記載しましょう。
3. 財産の把握を正確に
遺言を書く前に、自分の財産(不動産、預貯金、有価証券など)を一覧でまとめて把握しておくことが大切です。
4. 付言事項を活用する
法的な効力はないものの、遺族に対する想いや考えを伝える「付言事項(ふげんじこう)」もおすすめです。争いを防ぐ効果があります。
家族の皆さんへ
これまで支えてくれてありがとう。私の遺志に従って、争いなく円満に相続が進むことを願っています。
よくある失敗と注意点
・内容があいまいで特定できない
「預金の一部を妻に」では不明確。口座番号や金額を記載する。
・自筆証書遺言で、日付や署名を忘れる
一部でも欠けると全体が無効になることも。
・遺留分を侵害している
一定の相続人には最低限の取り分(遺留分)があるため、完全排除はできないケースあり。事前に確認を。
弁護士に相談するメリット
遺言書は「書けばいい」というものではなく、書き方ひとつでトラブルの種にも防波堤にもなります。弁護士に相談することで、以下のようなサポートが受けられます。
- 有効な遺言書の作成支援
- 財産や家族構成に応じた内容の提案
- 相続トラブルのリスク診断
- 公正証書遺言の手続きサポート
将来、家族が困らないように、早めに準備することが何より大切です。
まとめ
遺言書は、自分の「想い」と「意志」を残す大切な書面です。
- 自筆証書と公正証書の違いを知る
- 法的要件を満たす形式で作成する
- 財産と受取人を明確に記載する
- 弁護士に相談してリスクを最小限に
今は元気でも、いつ何があるかわかりません。大切な人を想って、今こそ「自分らしい遺言書」を残してみませんか?