初夏の皿には、“青さ”を残す。
初夏の野菜は、なんともみずみずしい。
インゲン、そら豆、ズッキーニ、スナップエンドウ…畑の緑はどれも“若さ”を感じさせてくれる。
フランス料理の技術には、しっかり火を入れたり、ピュレにしたりといった“変化”を楽しむものも多い。でも私は、こういった青い野菜に関しては、できるだけ“素材の青さ”を残すことを大事にしている。
たとえば、今の季節におすすめなのが、初夏野菜のテリーヌ。
ブランシール(軽くゆでる)した野菜たちを、コンソメのジュレで固めてつくる一品。火入れは秒単位で調整し、歯ざわりと香りを逃がさないように仕上げる。切り分けた断面には、初夏の庭のような、静かで鮮やかな緑が広がる。
皿に盛るときは、ジュレの透明感が涼やかに見えるよう、白い大皿にそっと。仕上げに少しだけ、ライムのゼストを削って香りを添える。
「口に入れると、風が抜けた気がしました」と言ってくれたお客様がいた。
私たちの料理が、そんな風景を感じてもらえるきっかけになれば、料理人として何よりうれしい。